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〜小説〜 アトピー入院@阪南中央病院

GodMan
GodMan
ゴッドマンだよー

以前の告知通り、少し遅くなりましたが、阪南中央病院(以下、略して「阪南」)の、ある半日を、私小説風にお送りいたしますwww
間違ってもそんなことはないでしょうが、好評であれば第2弾もあるかも。。
#んなわけない

 

グビッ グビッ グビッ…

長身で細身の身体に
ミル挽きコーヒーを
秒速100ミリリットルで流し込む
ミルくん

運動後のご褒美として
風呂上がりのおやじみたいに
腰に手をあて平らげる

オレらは今
阪南病院の受付待合室にいる

「あなたのためにドリップ中♥」
画面に映し出された珈琲自販機から
コーヒールンバの音が響き渡る♪

甘ったるい人工甘味料と珈琲の混ざった
なんともいえない匂いがあたりに漂う

「朝っぱらから飲むよね、身体に悪そう…」
誰かが言い放つ

おかまいなしに飲み干す

名残惜しそうに空カップを持ち
長い脚で颯爽と階段へ向かう

オレらの病室へは
運動を兼ねて
階段を登る人がほとんどだ

「スクワット200回後に4階は辛れぇ」
顔をおおきく歪ませ
バスケの罰ゲームを呪いながら
重い足を運ぶ、四十路のあおいさん

いまじゃ誰よりも
バスケに精を出し
少年ジャンプさながらに
『友情・努力・勝利』
な、感じの人となっていた

オレらは
朝食後の朝のバスケをこなし
一旦休憩するために
4・5階の病室に戻ろうとしていた

「じゃー、またあとで」
ポリポリと
膝裏をかきながら5階に向かう

オレは
都内の蔦の這う
レンガ造りの大学に通う21歳男子

気力に溢れ
何でもできると思っていた
当時が懐かしい

というのも、この半年
人生で最悪の日々を過ごしたんだ

それにより!?

二十歳やそこいらで角もとれ
すっかり物分かりのいい人間に
生まれ変わったように思う

ほんと最悪で
一億もらえても二度とヤラない
罰ゲーム

まるで前世が大罪人で
その貯まった「業」が・・・
最悪の日々をもたらしたと思えるほど

当時のオレは
ボロボロの心身で
なんとか授業には出席

でもできたのはそれぐらい

サークルにも顔を出さず
彼女にもついあたってしまい
愛想をつかされ

落屑と浸出液のダブル攻撃に
ひきこもる日々

 

苦労は人を大きくする
とは良く言ったものだ

辛い治療期間を経たことにより
元来後輩受けの良くなかったオレが

今となっては

阪南入院の年下どもから
存分に慕われている

(と自分では思っている)

 

 

お昼まではまだずいぶん時間がある
ゲームを持って屋上に向かう

無機質なコンクリートが広がる
屋上の一角に
洗濯干し場がある

色味の暗い
くすんだ患者のパジャマやらタオルが
首根っこをつままれたまま
宙に舞う

どこか陰鬱で
物寂しげに蠢(うごめ)く一群に
背を向け
金網のはるかむこうに目をやる

緑地からの風は
湿気を帯びて
ボクの火照った頬をふきぬける

日々走りまくった緑地は
見下ろすボクを優しく包む

深呼吸をする

いまだ乾ききらない汗が
よけいに風を感じさせる

 

「ひと狩りしませんか、一緒に?」
一人モンハンで
至福の時を過ごしていた時に
屈託のない笑顔で現れた
ミルくん

それ以来
屋上モンハンを
二人でするようになった

あれから、約一ヶ月が過ぎ
オレも来週退院だ

下を眺めると
シャトレーゼ好きの女の子達と
サラーが歩いている

サラーは
皆とシャトレーゼ前で別れて
コンビニ方面へ歩く

おそらくまた
少し先のコンビニ駐車場で
アメリカンギャング風に佇みながら
携帯を眺めるんだろう

月末は
コンビニのWi-Fiが彼女には必須

父親が横田基地に勤める
アメリカ人のサラーは
お母さんに連れられて
一ヶ月前にやってきた

黒人のお父さんは
ムキムキのキン肉マンなのだが
サラーは細面の気の優しい子である

携帯の自分向きのカメラには
自分が映るのが嫌だからと
ガムテープが貼られていた

そんなガムテもいつのまにか
剥がれてなくなっていた

 

少し遠くに
そびえ立つあべのハルカス

あるいて10キロの天王寺
度々遠出してみつけた好みの小径

近鉄沿線民にとっての天王寺は
埼玉県民の都会入り口である
池袋のような存在だ

そっと見上げると
暑さの元凶は
ジリジリと真っ逆さまに
ボクめがけて光線を撃ち続ける

洗濯物はきまぐれにひらめく

20度目の夏

シャトレーゼ
緑地
モンハン
ハルカス
ミル挽

いつかこの夏のかけがえのない
すべての思い出が
淡く
あいまいに
かすんでしまうだろう

 

 

まっさらな空で
支配者然に輝く光源体

まだなにものでもない
無垢な自分の影を
コンクリートにぶちかます

それは暴力的で抗うことを許さない。

気まぐれと力強さのハザマで
無意識に感じる

限りなく曖昧に
そして、おそらく

神様が用意してくれたものを

それは、

ボクだけのスタートライン